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奈良地方裁判所 昭和46年(わ)15号 判決

本籍及び住居

奈良市雑司町四八八番地

会社役員

松岡利雄

明治四三年一一月二八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官藤村輝子出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役五月、及び罰金三五〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は昭和二五年ごろより昭和四五年七月二一日までの間、「菊一文珠四郎永本店」の商号で各種刃物および名産品の販売を業としていたものであるが、その事業に対する所得税を免れようと企て、

第一、昭和四二年一月一日から同年一二月三一日までの総所得金額が一六、五九七、六八八円、これに対する所得税額が七、四三九、七〇〇円であるのにかかわらず、売上を過少に計上する方法で売上金の一部を除外し、簿外預金として蓄積したほか、仕入、経費、棚卸等も過少に計上してその一部を除外する等の不正手段により所得を穏匿し、同四三年三月一一日奈良市所在の所轄奈良税務署において、同税務署長に対し、同年度の総所得金額が二、八六八、一九二円、これに対する所得税額が五五八、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて同事業年度の前記正規の所得税額との差額六、八八〇、九〇〇円をほ脱し、

第二、昭和四三年一月一日から同年一二月三一日までの総所得金額が一七、四二七、二三七円、これに対する所得税額が七、九〇二、三〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正手段によつて所得を穏匿し、同四四年三月一二日前記奈良税務署において、同税務署長に対し、同年度の総所得金額が三、三五六、六一三円、これに対する所得税額が七四一、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて同事業年度の前記正規の所得税額との差額七、一六〇、七〇〇円をほ脱し、

第三、昭和四四年一月一日から同年一二月三一日までの総所得金額が一五、四四二、三八二円、これに対する所得税額が六、六八二、八〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正手段によつて所得を穏匿し、同四五年三月六日前記奈良税務署において、同税務署長に対し、同年度の総所得金額が三、五〇〇、六三六円、これに対する所得税額が七三三、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて同事業年度の前記正規の所得税額との差額五、九四九、一〇〇円をほ脱したものである。

(各通税所得の内容は別紙記載のとおりである。)

(証拠の標目)

被告人の当公判廷における供述のほか、第一回公判調書中の検察官請求証拠目録(甲)に記載された請求番号欄の番号2から98まで(但し、同目録には番号35の供述者角井恭三と表示されているが、角野恭三の誤りであるから訂正する)、同目録(乙)に記載された請求番号欄の番号5から83までと同一であるから、これを引用する。

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、夫々所得税法(昭和四〇年法律第三三号)二三八条一項に該当するので、情状により夫々懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条に従い、犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑につき同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、被告人を懲役五月、及び罰金三五〇万円に処し、右罰金につき、これを完納することができないときは、同法一八条に従い金一万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置することとし、右懲役刑につき、情状により同法二五条一項に従いこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 高木実)

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